パルスフィールドアブレーション(PFA)の導入
最新の不整脈治療について
2024年9月から、当院は最新のアブレーション治療法であるパルスフィールドアブレーション(PFA)を導入しました。この治療法は全国でもまだ限られた医療施設でのみでしか行われていない先進的な技術で、カテーテルアブレーションの「ゲームチェンジャー」とされています。PFAは従来の高周波アブレーションやクライオアブレーションと異なり、心臓組織を選択的に治療できるため、正常な周辺組織への影響を最小限に抑え、安全性と効果を両立しています。当院では現在、国内で使用可能な3種類のPFAを全て使用しており、患者さんに応じた治療が可能です。

豊富な実績と全国への技術共有
患者さんに優しい短期入院治療
被曝を最小限に抑える非透視アブレーション

被曝のリスクとその影響
被曝による影響は多岐にわたり、以下のような障害を引き起こす可能性があります
- 皮膚障害:紅斑、潰瘍、脱毛
- 造血障害:骨髄抑制による貧血や白血球減少
- 消化管障害:嘔吐や下痢
- 悪性腫瘍のリスク増加:長期的な被曝による発がんリスクの増大
これらのリスクは患者さんだけでなく、治療に携わる医療従事者にも及びます。特に医療従事者の場合、被曝の蓄積が白内障や悪性腫瘍のリスクを増加させ、長期的な健康への影響が懸念されます。
非透視アブレーションによるメリット
当院で行っている非透視アブレーションには、以下の具体的なメリットがあります
- 患者さんへのメリット:不要な被曝をほぼなくし、治療後の健康リスクを低減
- 医療従事者へのメリット:被曝量の低減による白内障や悪性腫瘍の予防、作業中の疲労軽減
これらの技術の活用により、患者さんにとっても医療従事者にとっても安全で快適な治療環境を提供しています。
安全性の高い治療実績
2024年に実施した854例のアブレーション治療では、以下の優れた成績を収めています
- 周術期死亡:0例
- 心タンポナーデ:0例
- 脳梗塞/全身性塞栓症:0例
これらの結果は、日本国内の平均値(死亡率0.17%、心タンポナーデ0.58%、脳梗塞/全身性塞栓症0.17%:Kusano et al., J-AB Registry: J Arrhythm. 2022)を大幅に上回り、当院の経験豊富な医療チームにより、患者さんに安心して治療を受けていただける環境を提供しています。
患者さん個々に適した治療提案
不整脈の治療はカテーテルアブレーションだけでなく、症状や状態に応じて以下のような治療法をご提供しています
- 薬物治療:症状が軽度の場合や手術が適さない患者さんに最適です。
- ペースメーカー植え込み:徐脈性不整脈(脈が遅くなる場合)の治療に有効です。
- リードレスペースメーカー植え込み:非常に小型で心臓の右心室の中に直接植え込むタイプのペースメーカーとなります。科長の山下は全国の医師に対してリードレスペースメーカ(AveirTM)の技術指導を行っています。
- 植え込み型除細動器(ICD):電気的除細動(AEDに代表されるいわゆる電気ショック)を要する致死性不整脈(頻脈性不整脈の中でも即座に対応しないと命を落とすいわゆる致死性不整脈)に対応する電気ショック機能付きペースメーカーです。
(施設基準が必要です。https://www.jadia.or.jp/citizens/icd-nintei.html#miyagi) - 心臓再同期療法(CRT):左右の心室が協調して動くことが出来ない状態(気が合わない人と二人三脚をしても上手く走ることが出来ませんよね)を改善する治療です。左右の心室を適切なタイミングで刺激することで心機能を改善させる治療となります。
- 刺激伝導系ペーシング(CSP):近年新たに注目されるようになった治療で、上述のCRTよりも心臓の同期不全の改善が期待できるような症例もいるペーシング治療となります。
当院では、豊富な経験と最新のエビデンスに基づき、一人ひとりの患者さんに最適な治療を提案します。不整脈に関するお悩みはぜひお気軽にご相談ください。
心房細動と脳梗塞予防の統合治療
心原性塞栓症を発症し、その後に心房細動が見つかった患者さんには、当院心臓血管外科による以下の治療法を提案しています
- 胸腔鏡下左心耳閉鎖術+肺静脈隔離術:脳梗塞予防のために左心耳を外科的に除去することと同時に心房細動の治療を同時に行うアプローチです。治療は胸部の4-5箇所に5-10mm程度の傷を開けて胸腔鏡を使用し処置を行います。カテーテルアブレーションよりも入院日数は多少長くはなります(1週間程度)が、心房細動に対する治療のみならず、心原性塞栓症の原因となる血栓が出来る左心耳を外科的に閉鎖することで脳梗塞の予防が最大限に期待出来ます。胸腔鏡を用いて直視下に閉鎖を行いますので、左心耳の解剖によらず治療が可能です。なお、欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでClass IIa適応(=治療や介入が有益であると考えられる証拠が強く、推奨される)となっています。
- 左心耳閉鎖術(経カテーテル的)
外科的手法が適さない患者さん向けの内科的手法です。抗凝固薬を内服している患者さんで出血リスクの高い場合に対応可能です。
(詳細はこちら:
https://www.sendai-kousei-hospital.jp/department/cardiovascular/specialty/specialty-laa)
これらの治療は、それぞれの患者さんの状況に応じて最適なものを考慮して提案いたしますので、各担当医と相談し決めるようにしてください。
最新技術と当院の取り組み
医療技術の進化はめざましく、特に不整脈領域では電気信号を可視化する技術が重要です。これにより、目に見えない信号が治療に活用されています。良いデバイスの有効活用には、適切な使用方法と症例経験が必要です。当院では最新技術の安全性と有効性を追求しながら、継続的に医療レベルの向上を図っています。また、学会報告や論文発表を通じて、得られた知見を共有し、全体の医療水準の向上に寄与しています。