診療科

循環器内科

専門治療

狭心症、心筋梗塞の治療法と予防

心臓が動くのには心臓の筋肉(心筋)が使われますが、この筋肉に酸素や栄養を送る血管が冠動脈です(図1)。一般に、冠動脈の血流が悪くなり胸痛が起きる病気は虚血性心疾患と総称され、狭心症と心筋梗塞(図2)がその代表例です。今回はこの病気の最新の治療法や予防を紹介します。

冠動脈が狭くなる狭心症、心筋梗塞

胸の痛みが注意信号

早期の受診、検査が不可欠

 

心停止の可能性も  

狭心症や心筋梗塞にかかりやすいのは、生活習慣病(用語解説❶)がある人で、このような危険因子を持つ人は、冠動脈内にプラークという悪玉コレステロール(LDLコレステロール)などの脂の塊ができてしまいます。この塊により冠動脈が高度に狭窄(きょうさく)するのが狭心症です。プラークは火山のようなもので、ある日、プラークの中の脂が噴火活動の様に血管内に飛び出してきます。  

この脂が血液と混じり合う血液の塊(血栓)が形成され、それにより冠動脈が完全に詰まり、その先の心筋が壊死するのが心筋梗塞です。  

心筋が酸素不足に陥ると狭心症発作が起こります。階段の昇り降りやゴルフなどで体を動かした時に締めつけられるような胸の痛みを感じるのが典型的です。また、胸の範囲だけでなく、下あごから肩、みぞおちの範囲(ネクタイを締める範囲)で痛みを感じる場合もあります(図3)。  

症状は、狭心症の段階であれば通常は3~5分で治まりますが、心筋梗塞まで至ると20分以上続きます。心筋梗塞の前段階として狭心症を起こす場合が多いため、狭心症と思われる症状が起きた場合、たとえ数分で治まっても、循環器内科医のいる最寄りの医療機関を速やかに受診することが必要です。また、心筋梗塞と思われる胸の痛みを感じた時は、危険な不整脈で突然の心停止を起こす場合がありますので、119番通報して救急車を呼びましょう。  

なお、仙台厚生病院では、昼間はもちろん夜間でも2名以上の循環器内科医が在院しているという全国的にも稀有な診療体制をとっていますので、狭心症や心筋梗塞に対する以下のような検査・治療が24時間いつでも迅速に行えるのが特徴です。

検査は負担少ない

狭心症と心筋梗塞の疑いがある場合、治療する可能性を考えると心臓カテーテル(用語解説❷)検査が、最も重要な検査となります。この検査では、手首もしくは太ももの動脈に、局所麻酔をした上でカテーテルを心臓まで挿入し、冠動脈を造影します(正式には冠動脈造影検査といいます)。  

カテーテルは冠動脈内の物理的に狭い場所を細かく観察するのに適しており、その後の治療の方針を組み立てる上で非常に役に立つ検査です。検査だけであれば、15分前後で終了し、大きな合併症もほとんど発生しません。特に手首からの検査であれば、身体的負担は少ないので80歳以上の高齢者でも安全に受けることができます。  

また、最近ではCT検査(用語解説❸)が発達してきました。立体的な冠動脈画像を作成することで、冠動脈内腔がどれほど狭くなっているのかを把握でき、また冠動脈壁の動脈硬化の状態を観察することができます(図4)。CT検査の利点は、入院が必要ないという点です。撮影前後の安静時間を含め1時間30分ほどで終了します。

 

技術進むカテーテル治療

管を入れ、血管広げる

狭心症なら数日で退院

発作予防には薬剤

 狭心症や心筋梗塞の治療は、薬物治療、心臓カテーテル治療、冠動脈バイパス手術(用語解説❹)を適切に組み合わせて行われます。薬物治療は、薬剤で冠動脈を拡張させて血流を増やしたり、心臓の負担を減らすことで、狭心症発作を予防したり心筋梗塞の範囲を軽減させます。

 しかし、薬物治療だけで症状が改善しない場合や、冠動脈の狭窄が非常に強い場合、冠動脈が完全に詰まっている場合は、心臓カテーテル治療や冠動脈バイパス手術が選択されます。特に最近ではカテーテル治療の発達に伴い、胸を切らずに治せる心臓カテーテル治療が選択されることが多くなってきています。

 心臓カテーテル治療は、手首にある橈骨(とうこつ)動脈や足の付け根にある大腿動脈を局所麻酔し、そこから直径2㍉程度のカテーテルを挿入して血管の中から冠動脈の狭窄を治療します。近年では身体への負担の少ない橈骨動脈からの治療が主流となっております。

 カテーテル治療はバルーン(風船)で狭い場所を拡張するバルーン拡張術や、金属でできたステント(網目状の筒)を狭い場所に留置して血管を拡げるステント留置術が主な方法です。ステントは薬剤が塗布されている「薬剤溶出性ステント」を用いることでステント再狭窄(ステントの中が再び狭くなる現象)の頻度を減らすことができます。

 手術の時間は30〜60分程度、長くても2時間以内で終わることが多く、狭心症の段階であれば、手術後は数日で退院、日常生活への復帰が可能となります(図5)。

硬い病変削る器具

 その他、使用できる病院は限定されるものの、狭くなっている場所が石のように硬くなっている場合にはロータブレーターやダイアモンドバックという器具で削り取ったり、プラークにレーザーを当ててプラークを減少させるエキシマレーザーなどの治療を併せて行ったりすることで、従来のカテーテル治療では難しかった冠動脈の狭窄もより安全、効果的に拡げることが可能となってきています(図6)。

 当院でのカテーテル治療件数は年間1000件以上と全国でもトップクラスであり、東北では第1位、全国でも第6位の件数となっております(2018年)。また当院では胸部症状を伴う救急患者を24時間体制で受け入れており、そのためより重症である急性心筋梗塞や不安定狭心症に対する緊急の治療件数が多く(全国第3位)、地域住民の皆様が安心して生活できますよう、診療体制の充実に努めております。

 

中高年は予防の心構えを

生活習慣病に要注意

暴飲暴食を控え、運動を

 

老化や遺伝も原因

 どんな病気も早期に対処することが重要ですが、それよりももっと大事なことは病気にならない事(予防)です。多くの病気はある日突然その身に降りかかってくる理不尽なものですが、狭心症や心筋梗塞をはじめとした動脈硬化性の病気はある程度予防することができます。

 「人は血管とともに老いる」という過去の有名な医学者の言葉がありますが、動脈硬化とは言ってみれば血管の老化現象ですので、避け得ない面もあります。それでも正しい知識と実践でその進行を遅らせることはできるのです。

 そのためにはどうすればいいでしょうか。この薬を服用すれば動脈硬化の進行を抑えられる、という薬は残念ながらありません。動脈硬化は老化や高血圧などの複合的な要因で起こり、簡単に対処できる訳ではありません。

 高コレステロール血症、糖尿病、高血圧は古典的な動脈硬化の危険因子と言われます。これらの病気を指摘されている人は、まず医師の指導の下でよくコントロールすることを目指しましょう。

 ご両親、ご兄弟に動脈硬化性の病気の方がいる人は、いない人に比べてその病気になりやすいので特に気を付ける必要があります。たばこもやめましょう。

 

定期診察で管理を

 生活習慣病と呼ばれるこれらは、恐ろしいことにほとんど自覚症状がありません。症状がないからといって放置すると動脈硬化、つまり血管の老化が進行し、心筋梗塞などの病気の発症につながります。

 定期的に診察を受けてコントロールすると同時に、動脈硬化性疾患の危険があることをそのたびに思い起こす必要があります。

 仕事や生活で忙しい中で定期的に通院するのは確かに面倒ですが、ある程度の年齢、男性であれば40才、女性なら50才を過ぎたら自身の健康にしっかりと配慮したいものです。

 生活習慣病を指摘されていなくても肥満や運動不足、塩分の過剰摂取、ストレス過多は生活習慣病を引き起こし、動脈硬化性の病気につながっていきますので、暴飲暴食を控え、定期的な運動を心掛けましょう。

 

ドクターコラム

冠動脈再開通は90分以内で

 心筋梗塞では、詰まった冠動脈を1分でも早く再び開通させることが重要です。なぜなら、再開通が遅れるほど死亡率が上昇することが知られているからです。このため、心筋梗塞を疑う症状がある場合、速やかに心臓カテーテルによる検査や治療ができる医療機関に搬送することが大切です。

 現在では、救急隊接触後から90分以内に、詰まった冠動脈を再び開通させることが目標とされています。この目標を達成するには、2名以上の心臓カテーテル施行医が、たとえ夜間であっても病院内に常駐する体制が好ましいと考えられます。

用語解説

生活習慣病 糖尿病、高脂血症、高血圧など、食事や運動の有無、喫煙、飲酒などの生活習慣が原因となる病気。遺伝や加齢(男性40歳以上、女性50歳以上)も一因として考えられる。

カテーテル 医療用の柔らかい管。血管や消化管、尿管などに挿入し、薬剤や造影剤の注入、体液の排出などに用いられる。用途により太さや材質はさまざまだが、心臓用には特殊プラスチックが用いられることが多い。

CT検査 コンピューター断層撮影による検査。エックス線を使って身体の断面を撮影する。特に心臓、大動脈、気管支、肺などの胸部、肝臓、腎臓などの腹部の病変には優れた描出能力を持つ。

冠動脈バイパス手術 狭くなったり詰まったりしている冠動脈の先に、血液のう回路を新しく作ることで、心筋の血流障害を改善する治療法。胸の裏側などにある直径2~3㍉の動脈を採取して施術する。

血管の病気 治療・リハビリ・検査

血管には、心臓や脳などの太い血管(大血管)のほか、下肢などの末梢血管があり、末梢血管の動脈硬化は末梢動脈疾患と呼ばれます。中でも一般的なのは下肢の血流が悪くなる動脈硬化で、最悪の場合は足が壊疽を起こし、切断を余儀なくされる場合もあります。

 一方、心臓・大血管の病気では治療のほか、運動療法に代表される「心臓リハビリテーション」も重要です。治療に向けては画像診断(心臓超音波検査、MRI検査、CT検査)による正確な診断が欠かせません。今回は下肢動脈硬化の治療、心臓リハビリ、画像診断の最新情報を紹介します。

 

末梢血管の動脈硬化

血流悪化 手足に痛み

カテーテル治療が有効

 

動脈と共に老いる

 加齢とともに全身の動脈硬化が進行することを表した言葉です。血流が悪くなると、部位ごとにさまざまな症状が現れます(図1)。ご高齢の方に加え、高血圧症や糖尿病、腎機能障害をお持ちの方は要注意です。

 ①足が冷たい。歩くと足が痛い。色が紫色。指が黒い。傷ができて治らない。

 ②家事をしたり、洗髪をしたりしていると腕がだるくなる。

 ③血圧が高くなり、薬を飲んでも下がらなくなってきた。

 末梢動脈疾患が原因かもしれません。

 

診断は簡単です

 末梢動脈疾患の好発部位は下肢動脈です。手足の血圧を測定するだけで簡単に異常を見つけることができます。下肢の血流障害の初期症状は歩行時の痛みです。重篤になると足の指に傷ができ、耐え難い痛みや冷感を認めます(図2)。こちらは血液透析を受けている患者さんで要注意です。心当たりがある患者さんは一度、検査を受けてみてはいかがでしょうか?  近年の治療指針では、複雑な動脈硬化性病変でもカテーテル治療での血行再建を第一選択とすることの妥当性が明記されました。仙台厚生病院では今までにたくさんの末梢動脈疾患の患者さんを治療してきました(図3)。前述の症状がおありでしたら、お気軽にご相談下さい。

 

 

 心臓リハビリテーション

患者の疑問に応える

運動、食事など3本柱で

 

生活習慣の改善を

 「心臓のポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難・倦怠感・浮腫などが出現し運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義される心不全。一度発症すると後戻りできず、大腸がんとほぼ同程度に回復が難しいなど予後不良な状態です。心不全患者は年々増加し、年間約35万人が新規発症する時代になりました。予防と治療ともに基本となるのが「生活習慣の改善」です。

 心臓病・心不全になると、今までと同じ生活で良いのか、運動はどれくらい行えるのか、食事はどうしたら良いか、再発を予防するには?など、多くの疑問がわいてきます。

 心臓リハビリテーションは、これらの疑問に応え、患者さんと一緒に行動するオーダーメイドのプログラムです。

 

有酸素運動が安全

 心臓リハビリテーションは3本の柱 ①運動療法②食事療法③生活指導から構成されます。

 運動療法:心臓病の種類、心臓機能など個々で可能な運動量は異なるため、その人にあった負荷を設定します。基本は有酸素運動で、ウォーキングが安全かつ効率的な方法です。息の切れない速度で1日20分~30分、週に3~4日程度行うのが良いとされます。

 食事療法:塩分管理が大切で、1日の塩分摂取量は6g以下とされています。最初は難しいと感じますが、家族やメディカルスタッフの協力の下で行うと目標を達成できるようになります。

 生活指導:禁煙・節酒・規則正しい生活を。心臓病増悪の原因は感染症も多く、手洗いや口腔ケアなど基本的な管理も大切です。

 

負の連鎖断ち切る

 心臓病の人は活動を制限しがちですが、運動も必要です。安静は運動耐容能(簡単に言うと体力)が低下します。運動耐容能を規定するのは心臓機能のほかに、呼吸機能、自律神経機能、骨格筋機能が含まれます。

 心臓病の患者さんは、これらも同時に低下しており、これがさらなる活動性の低下をもたらすという負の連鎖に陥っています。心臓自体は専門的治療で安定しても、これらの機能不全が残ったままでは本来の効果は期待できません。運動療法は、この負の連鎖を断ち切り活動性を上げていき、心臓病になる前の活動性を取り戻すことも可能です。

 

心臓超音波検査と心臓MRI

被ばくゼロ 妊婦も安心

CTは数秒で撮影終了

 

血液の流れも映す

 心臓超音波検査は、高周波数の超音波を心臓に発信し、返ってくる反射波を受け取り、心臓の様子をリアルタイムで画像モニターに映し出す検査です。プローブと呼ばれる超音波発信機を肋骨の隙間に沿うように当てて行います。

 検査の時間は15~30分ほど。放射線による被ばくの心配がないので、妊婦や乳幼児でも安心して受けられます。心臓の疾患が疑われる、ほぼ全ての人に行える検査です。

 心臓超音波検査で何が分かるのでしょうか。心臓の各部屋の大きさ、壁の厚さや動き、弁の状態です。また、血液の流れを映し出すことで、弁の異常や壁に穴がないかなどの異常を発見できます。

 仙台厚生病院では、1日60〜70件ほどの心エコー検査を施行しています。受診された患者さんは、予約なしに当日のうちに検査を行うことが可能です。

 

多くの病気を発見

 次に心臓超音波検査で分かる病気を紹介します。

 ①心臓の血流低下(心筋梗塞、不安定狭心症など)

 心臓の壁の動きを見ると、血流の低下した部位は他の部位と比べて動きが悪くなります。心筋梗塞発症から時間がたつと、壁が薄くなるといった変化も確認できます。

 ②心不全

 心臓のポンプ機能が低下し、心臓が大きくなります。ポンプ機能は低下していないものの、心臓の拡張する力が低下する拡張不全も確認できます。

 ③心筋症(肥大型心筋症、拡張型心筋症など)

 肥大型心筋症は心臓の壁が厚くなり、有効なポンプ機能の維持が難しくなります。拡張型心筋症は心臓の筋力とポンプ機能が低下し、心臓が拡大する病気です。

 ④弁膜症

 心臓内の部屋を隔てる四つの逆流防止弁の異常です。弁膜症には血液が逆流する閉鎖不全症と、弁が開きにくくなる狭窄(きょうさく)症があります。心臓超音波検査では弁膜症の重症度を評価し、治療法を検討します。

 ⑤先天性心疾患

 心臓の中を隔てている壁に穴が開いているなど、生まれつき心臓に形態異常があることです。心臓超音波検査により穴の位置を確認し、治療法を検討します。

 

MRIは磁気利用

 続いて心臓MRI検査について説明します。2018年8月、当院の心臓血管センター専用機として最新機種の1号機が導入されました。心臓MRI検査は、磁気の力を利用した画像検査です。

心筋症の診断や、心臓の機能評価、冠動脈の評価が、放射線被ばくなく可能となりました。被ばくを心配する患者さんや、妊娠の可能性がある女性の検査もできるようになりました。造影剤を使用しないで、冠動脈の評価をすることもできます。

当院で検査する場合の、主な目的について説明します。

 ①左室や右室の壁運動の評価

 MRIによる評価では、心エコー検査の際に問題となる肺や骨(肋骨や胸骨)の影響を受けることなく、画像撮影ができます。

 ②冠動脈の評価

 冠動脈の石灰化が強く、冠動脈CTでは判断が難しいような方でも、血管の狭窄の有無について評価が可能です。当院では、人間ドックでのMRIによる冠動脈の評価を開始しました。

 ③心筋虚血の評価

 少量の造影剤を投与し、心筋の染まり方から心筋血流分布を評価することができます。

 ④心筋症患者の原因検索(造影剤使用)

 造影剤(ガドリニウム)を使用した検査では、造影剤の心筋への分布を調べることで、今までは原因不明だった心臓の筋肉の病気を見つけることが可能となりました。

描出に優れるCT

 ここからはCT検査の説明です。CTとはコンピュータ断層撮影法のことで、CT検査ではエックス線を使って身体の断面を撮影します。体内のさまざまな病巣を発見することができます。特に心臓、大動脈、肺などの胸部病変に関しては、MRIに比べて優れた描出能が知られています。CT検査はトータル数分で済むこともあり、撮影自体は数秒で終了します。

 技術の進歩によりCTで心臓の詳細な評価が可能になっています。例えば、以前であれば心臓を栄養する血管である冠動脈を評価するためには心臓カテーテル検査が必要でしたが、現在は冠動脈CTを用いて検査が可能となっています。冠動脈が細くなると狭心症、急性閉塞すれば心筋梗塞という病気になります(図4)。

 

熟練撮影者が必要

 心臓の病気を評価するための心臓CT検査を実施するためには高機能CT機器と熟練した撮影者が必要です。高機能CTが必要な理由は、心臓は常に動いている臓器であるため秒単位の画像撮影が必要だからです。手ブレした写真が不鮮明であるのと同様、CT撮影に時間がかかると撮影画像がブレてしまって、病気の評価ができません。当院は「320列CT」と呼ばれる高機能CTを2台有しています。320列CTでは、1心拍(心臓が1回収縮拡張する)の間に心臓の撮影を完了することができます。当院は320列CTのうち1台を心臓CT撮影専門機として使用しているため、心臓CT検査を多く実施することができます。例えば2019年には冠動脈CTを2136件、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)関連の心臓CTも513件実施しました。検査実施件数が増えれば増えるほど、担当スタッフや画像解析者の技術も向上しています。当院の放射線技師は研究会で最優秀賞を獲得したり、国際学会で発表を重ねたりと、患者さんに正確な診断を提供するため努力を重ねています。

 

ドクターコラム

運動の処方箋を発行

 患者さんに合わせて、運動の強さ、時間、頻度、方法について処方を行います。

 運動の強さは、患者さんに自転車エルゴメーターをこいでもらい、その時の呼吸状態から丁度よい負荷量を決定します(心肺運動負荷試験)。

 運動を行っていくと、有酸素運動に無酸素運動が加わるタイミングがあり(嫌気性代謝閾値=いきち)、この時の心拍数を維持した運動が安全で疲れにくいと言われています。

 例えば、心拍数90回/分(心肺運動負荷試験で求めた嫌気性代謝閾値の心拍数)を維持したウォーキングを20分以上、週3回と、具体的かつ患者さんにとって実行可能な方法で処方箋を発行します。

 

 

弁膜症の危険性と最新カテーテル

 心臓に見られる代表的な病気の一つに「弁膜症」があります。心臓内の血液が一方通行で流れるようにコントロールする仕切りの役目を果たしているのが「弁」ですが、そこに異常が起きると、血液がうまく流れなくなり、命を落とす恐れもあります。今回は弁膜症の中でも特に患者数が多い「大動脈弁狭窄症」と「僧帽弁閉鎖不全症」について、原因や症状、最新の治療法を解説します。

 

心臓の弁開閉に異常、血流悪化

息切れ、失神 突然死も

聴診器で発見、早め受診を

 

狭窄や閉鎖不完全

 心臓の中には四つの部屋があります。部屋と部屋の間には扉があり、この扉のことを「弁」と呼びます(図1)。弁は閉じたり開いたりしますが、開閉の機能が損なわれた状態を弁膜症と言います。

 弁膜症には大きく二つの異常があり、一つは弁が狭くなる状態で大動脈弁狭窄症(きょうさくしょう)などが知られています。もう一つは弁が閉じ切らない状態で、僧帽弁閉鎖不全症などがあります。

 大動脈弁は心臓の出口にある弁です。それが狭くなり、血液がスムーズに流れなくなるのが狭窄症です(図2左)。現代社会において、大動脈弁狭窄症の主な原因は加齢によるものです。重症になると、息が切れる、胸が苦しい、気を失うなどの症状が出ます。また、激しい運動などで突然死する危険性もあります。

 僧帽弁は、心臓の四つの部屋の中でも身体中に血液を送り出すポンプ機能として最も重要な左心室の入り口にある弁です。僧帽弁閉鎖不全症は左心室の血液が逆流してしまい、ポンプの機能を効率よく果たせなくなってしまう症状です(図2右)。加齢による弁の変性のほか、心筋梗塞や拡張型心筋症といった他の疾患も原因になります。

軽いうちは無症状

 重症になると息切れや倦怠感を自覚することが多く、場合によっては心不全発作を起こしてしまい救急搬送されてしまう方もいます。

 どちらの弁膜症も重症になると症状が出現しますが、軽症から中等度の方はほとんどの方が無症状です。弁膜症を見つけるのに最も簡単な検査は、何と聴診器です。かかりつけの先生に胸の音を聞いてもらってみてください。弁膜症ならば、必ず気になる音が耳に飛び込んできます。

 

「ザッザッ」と雑音

 実は大動脈弁狭窄症と僧帽弁閉鎖不全症は同じ「ザッザッ」という雑音が聴診器で聞こえます。そうした異常な音が聞こえたら、循環器科のある病院を紹介してもらうといいでしょう。超音波を心臓に発信して反射して返ってくるエコー(反射波)を受信し、心臓の様子を画像に映し出して診断する心エコー検査があり、弁膜症があるかないか、またそれがどれ程悪いのかを詳しく調べることができます。

 弁膜症を見つけるのに何も痛い検査はないので、まずは安心して受診してください。

 

大動脈弁が狭くなる「狭窄症」

負担軽いTAVI有効

開胸せず動脈から人工弁

 

年だと諦めないで

 続いて大動脈弁狭窄症への対処法を説明します。最新の治療法に細い管(カテーテル)を用いる「経皮的大動脈弁植え込み術」(TAVI=タビ)があり、安心して患者さんに提供できます。

 大動脈弁狭窄症が重症になると、大動脈弁を人工弁に置き換える手術が勧められます。しかし、手術は開胸して、一度心臓を止めて行なうようなもので、高齢者や心臓以外に問題のある方にはリスクが高くなることもあります。

 以前は多くの高齢者がこの病気に悩まされ「年だから」という理由で手術を諦めていました。しかし、近年は体の負担が非常に少ないTAVIが実用可能となりました。

 

手術翌日から歩行

 どのように行うかというと、まず人工弁を圧縮してカテーテルに装填(てん)します。これを足の付け根の動脈から挿入し、心臓まで進めます。

 狭くなった大動脈弁のところで人工弁を広げ、外して置きます。人工弁は患者の弁を押し広げ、機能し始めます(図3右)。まさに一瞬にして弁が生まれ変わるのです。

 手術は1時間で、翌日から歩けます。入院日数も1週間。患者さんに優しい治療で、健康保険も適用されます。「苦しかった症状がこんなにも簡単に楽になった」と喜ぶ多くの患者さんの声を聞かせていただいています。

 

今年1000例に到達も

 TAVIは既に国内で2万人を超える患者さんに安全に施されています。仙台厚生病院では、2020年に国内で最初に1000例に到達するほど多くの患者さんに治療しています。

 東北ではTAVIを行える施設は少なく地域格差に悩まされています。「遠いから」「年だから」といって諦める人も多くいます。ぜひそういう方にこそTAVIを選んでほしい。その先には新しい人生が待っています。

 

僧帽弁を血液が逆流する「閉鎖不全症」

クリップ使い弁を修復

18年から日本でも施行

 

重症度で違う治療

 僧帽弁閉鎖不全症の治療方針は重症度によって異なってきます。他の弁膜症と同様に軽度・中等度の方は専門施設での定期的なフォローアップが重要ですが、高度まで進行された方は外科手術が適応となります。

 手術の方法としては元々の弁を人工弁に置き換える弁置換術もしくは自身の弁を温存する弁形成術があります。この僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術には長い歴史があり、当院でも多くの方が手術を受け社会復帰しています。

 では手術が必要と判断された方は全員が手術を受けられているのでしょうか。残念ながらそうではありません。大動脈弁狭窄症と同様に高齢化が進んでいる日本では体力の問題や他の病気の合併により外科手術の恩恵を受けることができない方が多くいます。

 しかし、アメリカやヨーロッパではこのような方に体への負担が少ないカテーテル治療が良い適応として実施されてきました。このカテーテル治療はアボットバスキュラー社のマイトラクリップシステム(図3左)を用いたもので10万人以上の方々に治療が行われました。

 

1㌢の傷で治療可

 このカテーテル治療ですが2018年4月に日本でも施行可能となりました。実際の治療は全身麻酔を用いて行いますが、右足の付け根の約1㌢の傷のみで治療が可能です。図の通り僧帽弁閉鎖不全症の原因となっている部位にクリップを取り付け自身の弁を温存することができます。2018年の国内導入以降、当院では国内のみならずアジア・オセアニア地域で最も多くの治療を行っております。

 

平穏な日常生活に

 このカテーテル治療導入前であればリスクを受け入れ外科手術に踏み切るか、もしくは命に関わる発作を何とか起こさないように外来通院を頑張るかしかありませんでした。しかし、今はカテーテル治療により多くの方々が僧帽弁閉鎖不全症の改善に成功し、病気の不安のない平穏な日常生活に復帰しています。海外で多くの方々を救ってきたこのカテーテル治療が日本でも多くの方々を救うことが期待されています。

 

先端医療への取り組み

ライブ開催情報

第1回宮城心血管ウェブセミナー
日時 2020年11月29日(日) 13:00~15:20
会場 オンライン配信
詳細

With コロナ 時代の新しい情報共有の形として第1回 宮城心血管ウェブセミナーを企画いたしました。詳細は添付資料をご参照ください。
先生方との繋がりを少しでも維持して参りたいと思いますので、お時間がございましたらご参加いただけますと幸いです。

詳細はこちらをご覧ください

代表世話人 仙台厚生病院 循環器内科科長 多田 憲生 先生

慢性透析患者さんに対する経皮的大動脈弁植込術(TAVI)の
治療実施施設に認定されました

 これまで、慢性透析患者さんは経皮的大動脈弁植込術(TAVI)の適応対象外とされてきました。

しかし、国内で治験が行われ、その安全性と有効性が示されたことから、今回適応拡大が承認されました。 当院は本治療の治療実施施設に認定されましたので、該当患者さんがいましたら、一度ご相談ください。

外科手術が困難な重度僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療に成功

2015年10月、外科手術が困難な重度僧帽弁閉鎖不全症のカテーテル治療に成功しました(治験識別記号:AVJ-514)。現在、本治療は臨床治験として施行されています。

僧帽弁閉鎖不全症は大動脈弁狭窄症に次いで患者数の多い弁膜症です。重度の僧帽弁閉鎖不全症は心不全の原因となり、現在、その根治的治療は外科手術のみとなります。

しかし、全ての方が外科手術を受けることは難しく、ご高齢な方、腎機能の悪い方、脳梗塞の既往のある方等は手術リスクが高く施行が見送られることがありました。本治療法はこのようは外科手術が高リスクな方を主な対象としています。AVJ-514は開胸することなく足の静脈からカテーテルを用いて僧帽弁閉鎖不全症を治療することができます。そのため、体への負担は少なくこれまで外科手術を断念していた方でも治療が可能となります。

現在、このカテーテル治療は臨床治験の段階ですが欧米では既に標準的治療として施行されており、本邦でも実臨床への導入が期待されています。

カテーテルによる大動脈弁植込術(TAVI)1000例施行しました

大動脈弁狭窄症は高齢化社会によって年々増加傾向にあります。今までは、胸を切って行なう外科手術しか治療の選択肢はありませんでしたが、2013年10月から、カテーテルによる大動脈弁植込み術 (TAVI)が行われるようになりました。

生体弁をカテーテルに装填し、足の付け根の動脈から挿入して、心臓に留置します。胸を切る必要はなく治療時間は約1時間と短く、外科手術に比べて極めて体の負担の少ない治療です。

当院ではこれまで1000例施行しました。2016年は年間165例を施行し、全国1位の症例でした。さらには、全例手術成功、術後30日死亡率1.3%と良好な成績を修めています。

開胸手術が可能な方にはそちらを、高齢者や手術が困難な患者さんにはTAVIを選択しています。今後も一例一例、心臓血管センターはチームで結束して全力で治療にあたって行きます。

またこの治療は東北でも実施可能な施設が限られています。そのため、遠方から来院される患者さんに対応するため、初診から治療入院までの病院への往復を、できるだけ少なくするように取り組んでいます。この取り組みによって、秋田山形の日本海沿岸地方や、会津若松地方、青森県などからも多くのご高齢患者さんがこの治療を受けに当院に受診してきています。治療に悩んでいる患者さんは、是非一度ご相談ください。

東北地方で初となる、心房中隔欠損症に対するアンプラッツァー閉鎖栓を用いたカテーテル治療の認定施設となりました

アンプラッツァー

心房中隔欠損症は左心房と右心房を仕切る心房中隔に穴の開く先天性心疾患で、約1,500人に1人認められ、先天性心疾患の約10%を占めます。欠損孔が大きい場合は息切れなどの症状が出現することがあり、治療が勧められます。今まで外科的な開胸手術が一般的でしたが、近年カテーテル治療によって、欠損孔を塞ぐことができるようになりました。

当院ではこれまで1000例施行しました。2016年は年間165例を施行し、全国1位の症例でした。さらには、全例手術成功、術後30日死亡率1.3%と良好な成績を修めています。

開胸手術が可能な方にはそちらを、高齢者や手術が困難な患者さんにはTAVIを選択しています。今後も一例一例、心臓血管センターはチームで結束して全力で治療にあたって行きます。

またこの治療は東北でも実施可能な施設が限られています。そのため、遠方から来院される患者さんに対応するため、初診から治療入院までの病院への往復を、できるだけ少なくするように取り組んでいます。この取り組みによって、秋田山形の日本海沿岸地方や、会津若松地方、青森県などからも多くのご高齢患者さんがこの治療を受けに当院に受診してきています。治療に悩んでいる患者さんは、是非一度ご相談ください。

エキシマレーザーシステムの導入(先進医療の適応取得)

当院では冠動脈および末梢血管治療用として2007年4月にエキシマレーザーを導入いたしました。エキシマレーザーはレーザーカテーテル(細い管に光ファイバーを組み込んだカテーテル)を介して紫外線レーザーを送りこみ、組織を蒸散させることによって、動脈の詰まりを取り除く治療器具です。

最大の特徴は組織を蒸散させるため末梢の塞栓を来たしにくいこと、高度狭窄でも容易に通過できることです。冠動脈治療用と末梢動脈治療用(閉塞性動脈硬化症)に分けて説明します。

1.冠動脈治療用

バルーン不通過例、完全閉塞、びまん性狭窄例、繰り返すステント再狭窄例、多量の血栓を有する急性心筋梗塞例などに有用性が証明されています。現在当院では、通常のバルーンとステントによる治療だけではなく、施設基準を取得しているローターブレーター(粥腫をダイアモンドチップで掘削する方法)も施行可能で、それに加えてレーザー治療が行えるようになったことは、患者さんにとって治療のオプションが拡大し、有益であると考えています。

2.末梢動脈治療用(閉塞性動脈硬化症)

末梢動脈の治療用としてレーザーは、冠動脈用よりさらに有用であると言われています。末梢動脈は狭窄が長く、粥腫の量が多いために末梢への塞栓の危険性が高くなるため、レーザーが効果を発揮します。

また、冠動脈では有用とされるステントが浅大腿動脈や膝下の動脈ではあまり効果がない場合が多く、このような時にレーザー治療を行えばステントを留置することなく終了することが出来ます。特に足を切断 しなければならないような重症下肢虚血には、今後積極的に使用していきたいと思います。

現在、末梢に 関しては保険適応にはなっていませんが、2013年4月から臨床試験(治験)が開始されます。当院も治験施設となっているため、適応となるケースではレーザー治療も使用可能となります。

3.最後に

東北地方で最初のレーザー治療導入病院となりました。特に、通常の治療が難しいような下肢病変に関してコンサルトしていただければ幸いです。今後も最新の機器を積極的に導入し地域医療に貢献したいと思いますので宜しくお願いいたします。

  • ガイドワイヤーを通じてレーザーカテーテルを病変部に導入
  • エキシマレーザーを照射
  • レーザー照射後のイメージ

 

シースレスカテーテルの開発

当院では可能な限り低侵襲の冠動脈インターベンションを目指してきました。そのひとつが左手からの経橈骨動脈インターベンションであり、90%以上の症例を経橈骨動脈から行ってきました。患者さんは、歩いてカテーテル室にきて車椅子で病室に戻ることができて、病室に戻ってから早期に歩行することができます。
しかし、橈骨動脈は細いため、大きいサイズのカテーテルを挿入すると、狭窄、閉塞、スパスムの危険性があります。そのため、細く低侵襲なカテーテルシステムが望まれていました。当院ではシースイントロデューサを必要としない、シースレスガイディングシステムの開発に着手して実用化しました。これにより、繰り返し検査や治療を行っても、橈骨動脈の損傷を最小限に抑えることができます。

  • カテーテル
  • カテーテル

医療設備

モービルCCU

  • ドクターカー 車両
  • ドクターカー 内部

心臓血管センターでは1台の救急車を有し、他病院や開業医の先生方の要請に応じて派遣しています。
医師と看護師、運転手、運転助手一名ずつ合計4人で出動し、急変しやすい循環器疾患の患者に対応することができます。

講師派遣

患者さんの紹介について

救急患者さんをご紹介いただく場合

CCU看護師が対応致します。代表電話022-222-6181でも結構ですが、専用電話の方がスムーズにつながります。なお、モービルCCUが必要な場合は、その旨遠慮なくお申し付けください。

通常のご紹介の場合

外来診療におけるスケジュールは下記の通りとなっております。受診される場合は紹介状(診療情報提供書)と保険証をご持参の上、病院本館1階医事課新患窓口にお越しください。
予約が必要な診療科に患者さんをご紹介される場合は、事前にFAX連絡票をお送りください。

診察受付時間
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