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卵円孔開存症に対するカテーテル治療

卵円孔開存(Patent Foramen Ovale、以下PFO)を通過した血栓を原因とする脳梗塞の再発予防として、カテーテルを用いて「AMPLATZER™ PFOオクルーダー」を心臓内に留置することでPFOが閉鎖され脳梗塞の再発を予防する治療です。

カテーテルは侵襲が少なく、治療の時間、手術後の入院期間も短くて済みます。

卵円孔開存症による脳梗塞予防の再発を目的としたカテーテル治療

疾患の概略

卵円孔とは、心臓の右心房と左心房の間の壁(心房中隔)の中央に組織が重なり合うようにできた穴で、多くは出生後に自然閉鎖しますが、成人の20~25%で開いたまま残っていると言われています。通常は無害で治療の必要はありません。ところがある特定の状況(お腹に圧力のかかる状況、せきや排便など)では右心房の圧力が一時的に上がり、わずかな血液の漏れが起こります。

多くの方ではそれでも症状を伴いませんが、下肢などに小さな血栓がある方は、血栓が卵円孔を通過して左心房に流れこみ、そして頭の血管に到達すると症状の原因となります。(下図) 脳の血流が悪くなり頭痛、めまい、暗黒感や輝きといった視野異常が出るほか、脳の血管に詰まって脳梗塞に至り後遺症を残すことがあります。 このように卵円孔などを経由して、下肢血栓が脳血管まで飛んで起こる脳梗塞は、「奇異性脳梗塞」と呼ばれ、40歳前後の若年層に多いことが特徴です。もし若くして脳梗塞を患いながらも原因がはっきりしていない方、もしくは既に卵円孔開存症と診断されている方は、受診をお勧めします。

対象患者さん

卵円孔開存が関与している脳梗塞をこれまでに患った方で、原則的に60歳未満の方が治療対象となります。脳梗塞を繰り返すと、麻痺などの後遺症が残る可能性が高くなります。

治療選択肢

脳梗塞の再発を抑える治療法の選択肢には、次のようなものがあります。

・薬物療法

・開胸術による卵円孔閉鎖

・カテーテルによる卵円孔閉鎖治療

薬物療法とは血液をさらさらにする薬(アスピリン,ワーファリン,新規抗凝固薬など)を使って血栓が作られることを予防する治療が広く行われています。一般にこの治療は有効ですが,薬は長期間(一生涯)服用する必要があります。薬を服用していても脳梗塞を再発する可能性があり、長期的にみると出血の副作用が心配され、中には激しい運動の制限や、若い女性の場合は生理中の過多出血の問題が生じる事があります。開胸術とは、胸を切開して行う外科手術です。人工心肺装置を使い、心臓を一時的に止めて行います。現在、卵円孔の閉鎖を目的とした開胸術は、あまり行われなくなりました。

近年、これまでの血液をさらさらにする抗血栓薬による薬物療法加えて、局所麻酔下に低侵襲なカテーテル治療を行う事により、脳梗塞の再発を更に低下させることが分かってきました。ニチノールと呼ばれる特殊な金属で作られた閉鎖栓(図2)を用いて、両側から挟みこんで穴を閉じます。(図3) 術後は3-4日の経過観察を行い退院となります。入院期間は全体で6日程となります。

Q&A

Q: 術前にどのような検査が必要になりますか?

A: 当院では主にレントゲン、心電図、経胸壁エコー、経食道エコー、血液検査などを行ないます。また、紹介頂いた脳神経科での検査結果も参考にしております。


Q: カテーテル治療後の抗血栓薬はどうなりますか?

A: 留置したデバイスに血栓がつかない様に、原則半年間は抗血栓薬を継続しています。その後は紹介して頂いた脳神経科の先生と相談しながら、個々の症例に合わせて抗血栓薬の休薬を検討していきます。


Q: 退院後の生活で注意する事はありますか?

A: 治療後、約1ヶ月間は激しい運動は避けて下さい。


Q: 術後にMRIを撮影する事は可能ですか?

A: 閉鎖栓はMRIに適合性がありますので問題はありませんが、MRI検査が必要となる場合は、事前に閉鎖栓を留置していることを告げてください。




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