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循環器内科

心房細動を起因とする脳梗塞の新たな予防治療

脳梗塞は「ラクナ梗塞」「アテローム血栓性脳梗塞」「心原性脳塞栓症」の3種類に分類されます。

中でも心房細動に起因する “心原性脳塞栓症”は、最も脳へのダメージが大きく深刻な後遺症を残し、時に致命的になる事があります。血液をさらさらにする“抗凝固療法”が広く行われていますが、一方で出血が問題となります。

この問題を解決可能なカテーテルによる低侵襲(患者の負担が少ない)な治療が2019年から使用できるようになりました。更に2021年8月には改良され、より理想的となった「WATCHMAN(ウォッチマン)FLX 左心耳閉鎖システム」を新たな治療法として紹介します。

心房細動による脳梗塞予防のための新たなカテーテル治療

疾患の概略

脳梗塞の原因となる心房細動は、心臓の4つの部屋のうち、2つの心房(右心房、左心房)が細かく震える状態となります。特に左心房から突出する“左心耳”は、2-4cmの臓器で盲端となっており、血液の流れが悪く血栓が形成されやすい部位です。心臓内部に発生する血栓の約9割がこの左心耳内で形成されます(図4)。


高齢者では心房細動を発症する方が多く、脳梗塞予防のために血液をさらさらにする抗凝固薬が必要になります。抗凝固薬は出血性副作用の危険性を高め、長期的な内服が難しい場合があります。この数cmの臓器の為だけに飲み薬を全身に作用させる必要があるでしょうか?不要な臓器ならば、そこを狙い撃ちして治療してしまえば良い、と考えるのが、むしろ自然な流れではないでしょうか。

『WATCHMAN左心耳閉鎖システム』は、そのニーズに応え、心内血栓の好発部位である左心耳を、カテーテル的に閉鎖する新しい治療法です。

対象患者さん

心房細動と診断された患者さん。

更に何らかの長期抗凝固療法の継続が懸念される患者さん。

・過去に何らかの出血(脳出血・硬膜下血腫などの頭蓋内出血、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸憩室出血などの消化管出血、鼻出血、血尿、など)でお困りの患者さん。

・ずっと抗凝固薬を内服することに不安のある患者さん。

・抗凝固療薬内服中にも関わらず、脳梗塞を発症された患者さん。

・その他、患者さんごと個別の事情に応じて相談します。

僅かな負担で治療可能です

手術は全身麻酔下で行われ、カテーテルを右大腿静脈から心臓まで挿入します。カテーテルを左心耳まで到達させて、WATCHMAN FLXという名称の専用デバイス(治療器具)を運びます。傘を開くようにしてデバイスを展開させ、左心耳を閉鎖します。安定して留置できていることを確認してから、カテーテルからデバイスを離して留置終了となります。

前世代のデバイスより、安全性・有効性が向上し、より多くの患者さんに適するように改良が加えられました。治療にかかる時間は1時間程度で、数日の経過観察をして退院となります。傷はたった1cm程度で、治療後数日で治癒します。治療後しばらくは抗凝固薬の継続が必要となりますが、やがて休薬が可能となり、出血リスクを抑えながら脳梗塞の予防が可能となります。

Q&A

Q: 抗凝固薬は具体的に何という名前ですか?


A: ワーファリン® (ワルファリン)、イグザレルト® (リバロキサバン)、リクシアナ® (エドキサバン)、エリキュース® (アピキサバン)、プラザキサ® (ダビガトラン)の5種類が、日本で使用されています。

※バイアスピリン® (アスピリン)は抗凝固療法に含まれません。


Q: 維持透析の患者さんは治療可能ですか?

A: 可能です。むしろ出血・脳梗塞共に危険性が高く、治療が推奨されることがあります。


Q: 左心耳は閉鎖して問題ないのですか?

A: 閉鎖することで健康への影響は何らありません。虫垂や胆嚢は、虫垂炎や胆嚢炎を発症すると外科的な手術が広く一般的に行われているように体内には不要な臓器です。左心耳は、虫垂や胆嚢と並んで不要な臓器であるどころか、時として致命的となる脳梗塞の大きな一因です。


Q: 治療が受けられないのは、どのような場合ですか?

A: 出血の危険性が低い患者さんは、手術を必要としない場合が多いとされます。その他、左心耳の大きさや形は人それぞれなので、形状がWATCHMANデバイスに合わない場合は治療困難な事が稀にあります。




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